人は誰でもミスをします。
「失敗して人は成長する」
「失敗を恐れてはいけない」
よく聞く言葉ですが、
医薬品の品質管理においては、必ずしも当てはまらないと感じています。
もちろん、最初から「できない」と逃げるのは良くありません。
しかし一方で、
「失敗しても大丈夫」という意識で試験に臨むべきではないと考えています。
なぜなら、
- 試験結果が異常値となり、製品や原料に問題があると誤認する可能性がある
- 試験のやり直しは信頼性を損なう(正当な理由の説明が必要になる)
といったリスクがあるためです。
つまり品質管理では、
「ミスから学ぶ」前に「ミスを起こさないこと」が強く求められる仕事です。
そこで今回は、
私自身の経験や周囲の事例をもとに、
品質管理で実際によく起こるミスを3つ紹介します。
① 記入漏れ・記入ミス
最も多いのがこのミスです。
一見すると小さなミスに思えますが、
医薬品の品質管理では記録の正確性と同時性が非常に重要です。
例えば、
- 記録用紙の時間の記入ミス
- 後から訂正(修正線)された記録
これらは第三者が確認した際に、
「結果に問題があったため、後から記録を書き換えたのではないか」
と疑われる可能性があります。
実際には正しい修正であっても、
記録の信頼性そのものに疑念を持たれてしまう点が問題です。
つまり、たった一つの記入ミスが
組織全体の信頼に影響を与えることもあり得ます。
品質管理とは、それだけ責任の重い業務だと言えます。
✔ 対策
- 書いた直後に必ず見直す習慣をつける
- 記入後のセルフチェックを徹底する
- 特に「時間」など後から確認できない情報は慎重に記入する
② 検体・サンプルの取り違え
複数ロットの試験や、繰り返し試験を行う際に起こりやすいのが
検体やサンプルの取り違えです。
具体的には、
- 使用するバイアルや容器を間違える
- 機器へセットする順番を取り違える
といったミスが挙げられます。
これらは本来、確認を徹底すれば防ぐ事ができるミスですが、
実際には作業に慣れてきたタイミングで発生しやすい傾向があります。
さらに注意が必要なのは、このミスは
発覚しないまま試験が完了してしまう可能性があること
です。
もし異常値が出た場合でも、
- 操作自体に問題があるように見えない
- 見た目ではミスに気づきにくい
といった理由から、原因の特定が難しくなります。
その結果、本来とは異なる原因を想定してしまい、
誤った対策につながるリスクもあります。
✔ 対策
完全に防ぐのは難しいですが、次のような工夫が有効です。
- 容器やバイアルの並べ方をルール化する
- ラベルや表示を誰が見ても分かるようにする
- 秤量や機器セットの前に「一呼吸おいて確認」する
特に重要なのは
「慣れている作業ほど意識的に確認すること」です。
③ 器具の扱いによるミス
試験器具の扱いによって発生するミスも、品質管理では非常に多いです。
例えば、
- メスピペットの目盛りを読み間違える
- 使用する容量のホールピペットを取り違える
- ピペットの先端が欠けており、正確に測定できない
- 器具が乾いておらず、共洗い不足で結果に影響が出る
- 器具に付着した液体に気づかず使用してしまう
このように、一つひとつは小さなミスでも、
結果に直接影響するものが多いのが特徴です。
これらのミスの多くは、
- 「洗ってあるから問題ない」
- 「保管されていたから乾いているはず」
といった思い込みや確認不足によって発生します。
✔ 対策
重要なのは、
「ミスは必ず起こる」という前提で行動することです。
例えば、
- 器具に異物や液体が付着しているかもしれない
- 器具が破損しているかもしれない
- 使用する容量を間違えているかもしれない
このように疑いながら確認することで、
ミスの発生を大きく減らすことができます。
さらに、
- 作業中に違和感があれば立ち止まる
- 周囲の人がミスが起こりそうな箇所に気づいたら指摘し合う
といった環境づくりも重要です。
個人だけでなく、
チーム全体でミスを防ぐ意識を持つことが、品質向上につながります。
まとめ
品質管理の現場では、どんなに注意していてもミスが発生する可能性があります。
しかし、医薬品の品質管理においては
「ミスを前提にしながらも、限りなくゼロに近づける姿勢」が求められます。
今回紹介したミスは以下の3つです。
- ① 記入漏れ・記入ミス(記録の信頼性に影響)
- ② 検体・サンプルの取り違え(原因特定が困難になる)
- ③ 器具の扱いによるミス(結果へ直接影響)
これらに共通しているのは、
「慣れ」や「思い込み」が原因になりやすいことです。
ミスを防ぐためには、
- 自分の作業を疑う視点を持つこと
- 一呼吸おいて確認する習慣をつけること
- チームで気づきを共有すること
といった基本的な行動の積み重ねが重要です。
品質管理で一番危険なのは、「大丈夫だろう」という油断です。
小さな違和感を見逃さず、
一つひとつの作業を丁寧に行うことが、信頼性の高いデータにつながります。


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