CAPA(キャパ)とは、Corrective Action and Preventive Actionの略語です。
日本語では一般的に「是正措置・予防措置」と訳されます。
「是正」という言葉はあまり馴染みがないかもしれません。
簡単に言えば、何か問題や異常が起きたときに、
「起きてしまった問題を正しい状態に戻す」
そして、
「同じ問題が起きないように対策する」
という考え方がCAPAです。
例えば、試験でミスが起きたとします。
そのミスを直すだけではなく、
「なぜミスが起きたのか?」
「どうすれば同じミスを防げるのか?」
まで考えて対策することが重要になります。
今回は、私が以前働いていた医薬品業界での経験をもとに、実際にどのような場面でCAPAにつながる考え方が必要になるのか、具体例を紹介していきます。
ケース① HPLCの定量でOOTが発生した
まずは、HPLCの定量試験でOOTが発生したケースです。
ちなみにOOTとは、Out-of-Trendの略で、「傾向から外れている」という意味です。
簡単に言えば、
「規格内ではあるけれど、いつもの結果と少し違う」
といった状態です。
医薬品の場合、規格内に入っているからといって、原因が分からないまま問題を放置するわけにはいきません。
そのため、必要に応じて原因調査を行います。
調査では、
- 試験方法をSOP通りに実施しているか
- 試験機器は正常に稼働していたか
- 試験環境に問題はなかったか
- 使用した試薬や試液に問題はないか
- 試験者の操作に問題はなかったか
など、さまざまな角度から確認します。
OOTの場合、規格そのものから外れているわけではないため、原因がはっきりしないケースもあります。
その場合には、サンプルの状態を確認したり、必要に応じて再測定を行ったり、熟練者の試験結果と比較したりしながら、原因を特定または推定していきます。
そして、原因が分かった場合には、
「どうすれば同じことが起きないのか」
を考えます。
例えば、
- 試験環境を改善する
- 操作方法を見直す
- 試験方法をより分かりやすくする
- 作業者への教育を行う
などです。
このように、原因を調査して終わりではなく、再発を防ぐところまで考えることがCAPAの重要な部分になります。
なお、OOS(Out of Specification:規格外)の場合も、まず原因調査を行い、原因に応じて必要な是正・予防措置を検討します。
ケース② 使用したロットがワークシートと違っていた
次は、試験で使用したロットが、ワークシートに記載されているロットと違っていたケースです。
これは、典型的なヒューマンエラーの一つです。
原因としては「確認不足」や「不注意」などが考えられます。
しかし、
「次から気をつけましょう」
だけで終わらせてしまうと、また同じミスが起きる可能性があります。
そこで、
「なぜ間違えたのか?」
だけではなく、
「なぜ間違えやすい環境になっていたのか?」
まで考えることが重要になります。
例えば、同じ製品を連続して測定していると、サンプルを取り違えてしまう可能性があります。
場合によっては、測定結果の傾向などから取り違えに気づくこともあります。
しかし、たまたま結果に違和感がなかった場合、間違いに気づけない可能性もあります。
そうなると、別の原因として調査を進めてしまったり、場合によっては本来問題のない製品まで出荷を止めることにつながる可能性があります。
だからこそ、ロットの取り違えを防ぐ仕組みが重要になります。
例えば、
- 使用前にロット番号を確認する
- ワークシートと現物を照合する
- 確認するタイミングを明確にする
- 必要に応じてダブルチェックを行う
などの方法があります。
大切なのは、
「人に気をつけさせる」だけではなく、「間違えにくい仕組みを作る」
ということです。
これが予防措置の考え方につながります。
ケース③ ワークシートの確認でOOTの見逃しに気づいた
最後は、試験結果が記載されたワークシートを照査・確認した際に、OOTに該当する結果を見つけたケースです。
例えば、
製品規格:pH 4.0~5.0
OOTの管理範囲:pH 4.5~5.0
だったとします。
試験者がpH 4.4という結果を出したにもかかわらず、製品規格には入っているため、そのまま試験を終了したとします。
しかし、後日ワークシートを確認した照査者が、
「4.4ならOOTなのでは?」
と気づきました。
この場合、単純に「OOTが発生した」という問題だけではありません。
「なぜ試験者はOOTに気づかなかったのか?」
という部分についても考える必要があります。
もちろん、pHがなぜその値になったのかについては、
- 試験方法
- 試験機器
- 試験環境
- 試薬・試液
- 試験操作
などを確認する必要があります。
それに加えて、
「なぜOOTを見逃してしまったのか」
についても調査します。
例えば、
「OOTの判定方法を正しく理解していなかった」
「確認する手順が分かりにくかった」
「記録上、OOTを確認する場所が分かりづらかった」
など、さまざまな原因が考えられます。
このような場合には、単純に試験者を注意するだけではなく、
- OOTの判定方法を明確にする
- SOPを分かりやすくする
- 確認項目を追加する
- 教育を行う
など、同じ見逃しが起きないような対策を考えます。
ここで重要なのは、
「OOTが発生したこと」だけではなく、「OOTを見逃してしまったこと」も問題として考える
ということです。
一見すると小さなミスに見えても、それが見逃される仕組みになっているのであれば、同じ問題が繰り返される可能性があります。
そのため、問題が起きた後に原因を調査するだけでなく、再発を防ぐ仕組みまで考えることが重要になります。
CAPAで大切なのは「人を責めること」ではない
ここまで3つのケースを紹介しましたが、CAPAを考えるうえで個人的に大切だと思うことがあります。
それは、
「誰が悪かったのか」だけで終わらせないこと
です。
もちろん、作業者の不注意が原因になることもあります。
しかし、
「○○さんが確認を怠ったから」
「○○さんの操作ミスだから」
だけで終わってしまうと、別の人が同じミスをする可能性があります。
だからこそ、
「なぜそのミスが起きたのか」
「なぜそのミスを防げなかったのか」
「どうすれば次は起きないのか」
まで考えることが大切です。
これがCAPAの考え方なのだと思います。
まとめ
CAPAとは、
Corrective Action and Preventive Action
の略で、日本語では是正措置・予防措置と呼ばれます。
簡単にまとめると、
問題が起きた → 原因を調べる → 問題を是正する → 同じ問題が起きないようにする
という考え方です。
QCの仕事では、OOSやOOT、逸脱、ヒューマンエラーなど、さまざまな問題が発生する可能性があります。
そのときに大切なのは、単純に「ミスをした人を注意する」ことではありません。
「なぜ起きたのか」
「どうすれば繰り返さないのか」
を考えることです。
私自身、医薬品の品質管理を経験する中で、CAPAという考え方は品質を守るために非常に重要なものだと感じました。
問題をゼロにすることは難しいですが、一度起きた問題を次の改善につなげることはできます。
そう考えると、CAPAは単なる「問題が起きた後の対応」ではなく、より良い品質管理を作っていくための仕組みなのだと思います。

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