製造業でよくある悩みの一つが、
「生産現場」と「品質管理」のすれ違いです。
どちらも会社にとって重要な役割ですが、
考え方や優先順位の違いから衝突が起きやすい関係でもあります。
なぜすれ違いが起きるのか?
まず大前提として、両者の目的が微妙に異なります。
- 生産現場:効率よく、早く、数をこなすこと(利益重視)
- 品質管理:不良を出さず、基準を守ること(品質重視)
どちらも正しいのですが、この違いが摩擦を生みます。
私自身、生産現場で2年半、品質管理で2年半の仕事を経て生産現場での動きや品質管理での動きについて学んできました。
それを踏まえて品質管理としての生産現場への対応、生産現場としての品質管理への対応について実体験を踏まえて書いていこうと思います。
生産現場と品質管理(品質保証)
生産現場と品質管理、それぞれの役割
生産現場では、
月間・週間のスケジュールをもとに計画通りに生産を進めることが求められます。
- 納期を守る
- 計画数量をこなす
- ラインを止めない
これが最優先事項になります。
一方で品質管理は、
生産された製品を検査し、出荷までに品質を担保することが役割です。
本来は交わらないはずの領域
この2つだけを見ると、
👉「作る側」と「確認する側」
であり、一見そこまで強く関わらないようにも思えます。
しかし実際には、品質管理の役割はそれだけではありません。
品質管理は“現場も見ている”
品質管理(あるいは品質保証)は、
- 製造方法に問題がないか
- 生産工程に異常がないか
- 作業者の手順に問題がないか
といった生産プロセスそのものもチェックしています。
つまり、
👉「出来上がったもの」だけでなく
👉「作り方」まで見ている
ということです。
なぜ嫌われやすいのか?
この構造があるため、現場からすると品質管理は
- 細かいことを言ってくる
- 作業を止める存在
- 口出ししてくる部署
という印象を持たれがちです。
極端に言えば、
👉「指摘する側」「指摘される側」
という関係性になりやすく、
結果として忌み嫌われる存在になってしまうことも少なくありません。
現場経験のギャップ
さらにすれ違いを大きくする要因として、
👉 品質管理の担当者が現場経験者とは限らない
という点もあります。
そのため現場側からすると、
- 現場の大変さを分かっていない
- 実際にやったことがないのに口を出してくる
と感じてしまうのも無理はありません。
この段階で見えてくるのは、
👉 品質管理は良いものを作るために「正しいこと」を言っている
👉 でも現場からは生産効率の面から「邪魔」に見えてしまう
という構造です。
よくあるすれ違い①「スピード vs 品質」
生産現場と品質管理で、最も起こりやすいすれ違いが「スピード」と「品質」の優先順位だと思います。
生産現場の本音
生産現場には、
- 納期があるから、できるだけラインを止めたくない
- 多少のズレであれば問題ないのではないか
- できるだけ効率よく製造したい
- 人件費などの経費も抑えたい
といった考えがあります。
もちろん、医薬品のように「多少のズレ」も許容できない業界では話が変わりますが、工業製品では一定の範囲内であれば、品質と生産効率のバランスを考えることも重要になります。
生産現場からすれば、品質を追求するあまり生産が止まってしまえば、納期や生産計画に影響してしまいます。
品質管理の本音
一方で、品質管理からすると、
- その「多少のズレ」がクレームにつながる可能性がある
- 基準を守らなければ、そもそも基準を設ける意味がない
- 基準が安定しなければ、製造される製品の品質も安定しない
- 一度市場に流出した不良品は、後から取り戻すことが難しい
という考えになります。
品質管理としては、目の前の生産効率だけではなく、その判断が将来的にどのような問題につながるのかまで考える必要があります。
そのため、
生産現場:「多少ならいいから、まずは生産を進めたい」
品質管理:「その“多少”を見逃して大丈夫なのか?」
という対立が起こります。
どちらも会社のことを考えているのですが、見ている部分が違うんですよね。
生産現場は「今日・今週・今月の生産」を見ていて、品質管理は「その製品が出荷された後まで」を見ている。
この視点の違いが、
「品質管理は細かすぎる」
「生産現場は品質に甘すぎる」
という、お互いの不満につながってしまうのだと思います。
よくあるすれ違い②「現場を知らない vs ルールを守らない」
次によくあるのが、「現場を知らない品質管理」と「ルールを守らない生産現場」という対立です。
生産現場の本音
生産現場からすると、品質管理に対して、
- 現場の大変さを分かっていない
- 実際に作業したことがないのに口を出してくる
- 理想論ばかりで、現実的ではない
- 「こうすればいい」と言うのは簡単だけど、実際にやるのは大変
と感じることがあります。
特に、品質管理側が現場経験のない人だった場合、
「実際にやったことがないから、そんな簡単に言えるんじゃないか」
と思ってしまうのも無理はありません。
現場には、作業時間や人員、設備、納期など、実際にそこで働いている人にしか分からない事情があります。
品質管理の本音
一方で、品質管理からすると、
- 決められたルールを守らないから問題が起きる
- なぜ決められた手順を守れないのか
- 「今までも大丈夫だった」は理由にならない
- 問題が起きてからでは遅い
という考えになります。
品質管理としては、現場を困らせたいわけではなく、決められた基準やルールを守ることで、安定した品質を維持したいという目的があります。
しかし、現場からすると「また品質管理から細かいことを言われた」と感じてしまう。
逆に品質管理からすると、「また現場がルールを守ってくれない」と感じてしまう。
こうして、お互いに不満が積み重なっていきます。
本当に必要なのは「相手を知ること」
この問題は、どちらか一方だけが悪いとは言い切れないと思います。
現場は品質管理がなぜそのルールを求めているのかを知る。
品質管理は現場がなぜそのルールを守ることが難しいのかを知る。
この両方ができれば、かなり関係性は変わるのではないでしょうか。
結局のところ、
「現場を知らない」
「ルールを守らない」
とお互いを批判するだけでは、何も解決しません。
相手の立場や事情を理解しようとすることが、すれ違いを減らす第一歩なのだと思います。
よくあるすれ違い③「指摘=否定に感じる」
品質管理と生産現場の間で起こりやすいのが、「指摘する側」と「指摘される側」という関係です。
品質管理から何かを指摘されたとき、製造側は、
- ダメ出しされた
- 自分たちの仕事を否定された
- 文句を言われた
- また細かいことを言われた
と感じてしまうことがあります。
一方で、品質管理側には、
- 問題を未然に防ぎたい
- 品質に影響するリスクを減らしたい
- 決められたルールを守ってほしい
という意図があります。
つまり、「否定するための指摘」ではなく、「品質を守るための指摘」なのです。
製造側にも言い分がある
もちろん、製造側にも言い分があります。
「製品を量産するために、現場でできることをやっている。そこに対して、いちいち口を出さないでほしい」
と思ってしまうのも無理はありません。
一方、品質管理からすれば、
「最初から決められているルールなのだから、きちんと守ってほしい」
「途中で決まったルールであっても、品質に影響する以上は守ってほしい」
という考えになります。
どちらも自分の仕事を真面目にやっているからこそ、意見がぶつかってしまうのです。
「言われる側」と「言う側」の構造
さらに、この対立を生みやすくしているのが、品質管理と製造の立場の違いだと思います。
会社によって異なりますが、製造側から品質管理側に意見を言いにくく、逆に品質管理側から製造側には指摘しやすいという関係になることがあります。
その結果、
品質管理=指摘する側
製造=指摘される側
という構造ができてしまいます。
極端に言えば、
「品質管理が上司、製造が部下」
のような関係に見えてしまうこともあります。
もちろん、本来は上下関係ではありません。
どちらも会社にとって必要な役割を担っており、良い製品を作って世の中に届けるという目的は同じです。
だからこそ、品質管理が「指摘する部署」、製造が「指摘される部署」という関係になってしまうのは、あまり良い状態ではないのかもしれません。
最終的には、「指摘する・される」ではなく、「一緒に品質を作る」という意識を持てるかどうかが、両者の関係を良くするポイントなのだと思います。
すれ違いを減らすためにできること
ここまで生産現場と品質管理のすれ違いについて書いてきましたが、では実際にどうすれば、このようなすれ違いを減らせるのでしょうか。
私が大事だと思うのは、次の4つです。
① お互いの「立場」を理解する
まずは、相手にも相手の事情があることを理解することです。
生産現場には、
「納期があるから止められない」
「計画通りに生産しなければならない」
という事情があります。
一方で品質管理には、
「品質に影響する可能性があるから止めなければならない」
「決められた基準を守らなければならない」
という事情があります。
どちらも会社にとって必要な仕事であり、どちらか一方が間違っているわけではありません。
まずは「相手にも、その立場だからこその理由がある」と理解することが、すれ違いを減らす第一歩なのだと思います。
② 現場目線と品質目線をすり合わせる
次に重要なのが、事前に認識を合わせておくことです。
例えば、
「どこまでなら許容できるのか」
「どこからがNGなのか」
「異常が起きた場合はどう対応するのか」
といったことを、あらかじめ明確にしておきます。
これが曖昧なままだと、問題が起きたときに、
「そこまでやる必要があるの?」
「いや、決まりだからやってください」
というような、その場での言い合いになってしまいます。
あらかじめお互いの認識を合わせておくことで、無駄な衝突は減らせると思います。
③ コミュニケーションの取り方を変える
同じ内容を伝える場合でも、言い方によって相手の受け取り方は大きく変わります。
例えば、
❌「ダメです」
❌「基準違反です」
❌「ちゃんとルールを守ってください」
と言われれば、製造側としては責められているように感じるかもしれません。
それを、
⭕「このままだと○○のリスクがあります」
⭕「この部分が品質に影響する可能性があるので、一緒に確認しましょう」
と伝えるだけでも、印象は変わります。
もちろん、守らなければならないルールを曖昧にする必要はありません。
ただ、「指摘する」のではなく「問題を共有する」という意識を持つことが大切なのだと思います。
④ 一緒に解決する姿勢を持つ
そして個人的に一番大事だと思うのが、指摘して終わりにしないことです。
「これはダメです」
と言うだけでは、製造側からすると、
「じゃあどうすればいいの?」
となってしまいます。
もちろん、すべてを品質管理が解決する必要はありません。
しかし、
「どうすればルールを守りながら、現場の負担を減らせるか」
「どうすれば品質を維持しながら、効率よく生産できるか」
を一緒に考えることはできます。
品質管理が現場を敵として見るのではなく、生産現場も品質管理を敵として見ない。
「良い製品を作る」という共通の目的に向かって、それぞれの立場から協力する。
これが理想的な関係なのではないかと思います。
まとめ
ここまで、生産現場と品質管理のすれ違いについて書いてきました。
両者のすれ違いは、
- 目的の違い
- 立場の違い
- 考え方の違い
- 伝え方の違い
など、さまざまな要因から生まれます。
生産現場には「計画通りに、効率よく製品を作る」という役割があります。
一方、品質管理には「決められた基準を守り、問題のある製品を流出させない」という役割があります。
そのため、意見がぶつかること自体は、ある意味では仕方のないことなのかもしれません。
しかし、本来どちらも目指しているのは、
「良い製品を世の中に届けること」
です。
だからこそ、対立するのではなく、お互いの立場を理解しながら協力することが重要なのだと思います。
私が考える、すれ違いを減らすために大切なことは次の4つです。
👉 相手を否定しないこと
👉 品質を守るための基準はきちんと設けること
👉 お互いの立場を理解すること
👉 問題が起きたときに一緒に解決すること
品質を守るためには、厳しいルールや指摘が必要になる場面もあります。
だからといって、品質管理が一方的に現場を責めるような関係になってしまえば、良い製品を作ることは難しくなります。
逆に、生産現場が「これくらいなら大丈夫」とルールを軽視してしまっても、品質を安定させることはできません。
生産現場と品質管理は、敵ではなく、同じ製品を作る仲間です。
お互いの仕事を理解し、必要なときには意見をぶつけながらも、最終的には同じ方向を向く。
それが、生産現場と品質管理にとって理想的な関係なのではないかと思います。


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